彼女

特別お題「おもいでのケータイ」

 

今は亡きサンヨーのスライド式ケータイは、一生使い続けたいし、使い続けられると思っていた。初めて出会ったのはW31SAだった。その次はW51SAにした。本当にお世話になった。ところがW51SA発売の翌年、三洋電機は携帯電話事業を京セラに売却してしまう。鳥取三洋という隠れた名メーカーも抱えた三洋の撤退に悲しんだことを覚えている。いいモノが残り続けるわけではないということも、この出来事を通して学んだ。

W31SAに機種変する少し前(ちなみにW21SAからの機種変だった)、人生で初めてお付き合いした人ができた。
彼女はドコモのケータイを使っていた。キャリア(当時はこんな小洒落た言い方じゃなくてケータイ会社、とか呼んでたような気もする)が違うと絵文字が使えない時代だった。絵文字を使うと文字化けして、= こんな文字が出てきたっけ。だから僕たちはしばらく表情を表すときは顔文字でコミュニケーションをとっていた。


付き合ってほどなく、彼女が「私もauにする」と言った。僕は少しの驚きと、なんとも言えないうれしさを感じていた。学割があるとはいえ、家族が使っていて家族割などの恩恵も受けられるドコモをやめて、auにする。その選択が小さなそれではないことは明らかだった。MNPなんて遠い未来の話だ。auにすれば同じケータイ会社だから絵文字も使える。若干悪いなとも思いながら彼女が合わせてくれたことにすごく喜びを感じていた。彼女が選んだ機種は、W21Hのレッドだった。偶然にも僕と同じスライド式のケータイだった。

折りたたみ式はいちいちパカパカするのが面倒だった。その点、スライド式は片手かつ少ない動作で画面を確認できる。彼女も僕と同じ気持ちを多少なりとも持っていればうれしいと思っていた。
それから何ヶ月か経って別れることになってしまうが、この一件も含めて彼女には感謝しかない。自分が未熟だったこともたくさんあって、あなたから別れを切り出させてしまってごめんなさい。元気でやっていることを願います。


日本には、三洋電機という名機をたくさん排出したメーカーがあったのだ。今では僕もiPhoneを当たり前のように使う、Appleの軍門に下ってしまったおじさんだ。
三洋電機の携帯部門のスピリットが、現在の日本のスマホメーカーの技術者に受け継がれていることを、切に願う。

 

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